グルーポンというビジネスモデルのすごさ・マイクロ商品券という仕組み

しっかしグルーポンって初めに考えた人はすごいな。

ビジネスをやる上で、代金が先にもらえ、商品の引き渡しは後という取引くらい素晴らしいものはない。そのうえ在庫を抱える必要もなく、大資本も全く必要ないという商売があったらどうだろう。成功の可能性は極めて高い。グルーポンモデルはそれらの条件をすべて備えているわけで、次から次に参入者が現れるのも理解できる。

以下備忘録的にメモ。

グルーポンはマイクロ商品券

グルーポンとは何かと言うと、ようするにマイクロ商品券だと理解した。商品券というものは昔からあるが、全国展開している百貨店、NTTやJRが発行するテレホンカードやオレンジカードなど、主に大企業の販売するものだった。図書券や文具券など、小規模店舗向けのものも存在するが、これらは業界団体が発行することで、後で触れる小規模事業者では商品券を発行できないという問題を解決した例だ。

商品券という仕組みのキモは、先に現金を受け取るが商品は渡さないということだ。1枚あたり数円で印刷した紙を、1000円や1万円で売るのだ。こんなにおいしい話はない。

もちろん、最終的には商品券で購入する客が現れ、受け取った現金に相応するサービスを提供することになるが、それでも発行者側にとっておいしい仕組みであることに変わりはない。

資金の借り入れに例えて考えればよく分かる。銀行から100万円を借り入れれば、利率と借入期間に応じた利息を支払わねばならない。しかし100万円分の商品券を販売した場合、利息を払う必要はない。どちらも同じ100万円の現金を手に入れることに変わりはないが、資金コストは全く違う。商品券を売るのは、利息なしで借り入れを行うようなものと言える。逆に私たち客の側から見れば、利息をくれない銀行に金を預けるようなもので、バカバカしいことこの上ない。

さらに商品券は、死蔵されたまま使われない物が大量に出てくる。金を借りたら借りた相手がそのことを忘れてくれるようなものだ。金券ショップに行くと、百貨店の商品券やテレホンカード、オレンジカードが大量に売られている。あれはNTTやJRが無利息で借りている金の証文みたいなものだ。

そんな風に商品券というのは発行者側にとってありがたい仕組みなわけだが、小規模事業者には縁のない話だった。仮に小規模事業者が商品券を発行したとして、買う側からすれば、使える場所が少ない、小規模事業者はいつ倒産するか分からないなど、購入をためらわせる要素が多かった。商品券が単なるチケット販売ではなく金融の仕組みを持っている以上、資本の裏付けが必要となる。商品券が大企業の提供するサービスでしか成立しなかった理由の一つがここにある。

小規模事業者に商品券発行の道

グルーポンは、小規模事業者に商品券的な仕組みを提供する手段をもたらした。

これまで飲食店が販促ツールとして頼っていたのは、割引額を印刷したクーポンだった。街角で配られる割引クーポンの冊子は、無料だから受け取ってくれていた。仮にどこかの居酒屋で使える1枚1000円や2000円の商品券を街角で売っていたとして、それを買う人が居ただろうか? 居たとしても少数で、効率が悪すぎるから結局は成り立たなかっただろう。

ところがtwitterやSNSに代表されるソーシャルメディアの発達により、突如としてマイクロ商品券というあり方が成り立つようになった。マイクロファイナンスがちょうど、従来の銀行が無視してきた層へ小口融資の道をもたらしたように、グルーポンという仕組みは商品券という大規模資本でしか実現できなかった仕組みを小規模資本の店舗にもたらした。

クーポンに比べ高い魅力

クーポンとのビジネス上の差は圧倒的だ。まずクーポンでは、店舗側がクーポンブック発行者に金を払う。金を払って割引券を掲載してもらうのだ。そしてそれが実際の売上につながるのはずっと先だ。支払いが売上につながるまでにかかる時間は、すべて資金コストとなる。払った額に見合う効果を得られないことも度々あっただろう。

グルーポンではまず将来の見込み客が発行者に金を払う。金を先にもらい、実際に商品をわたすのはずっと先になる。商品券ビジネスのおいしい部分を、小規模事業者も得ることができるようになったのだ。クーポンビジネスにおいて店舗側が負担していた資金をコストを、客の側が負担する仕組みと言うこともできる。

もちろんグルーポンを利用するユーザーにとっても悪い話ではない。グルーポンの魅力はその割引率の高さにもあるし、単に割引券を使うのに比べ、イベント的な魅力も高い。それでも店舗側にすれば、金を払って割引券を発行するの比べ、確実な見込み客を得られ、代金を先に得られるグルーポンの魅力が勝ることは言うまでもない。商品券がそうであるように、グルーポンにおいても死蔵されたまま有効期限を過ぎるチケットも一定割合出現しているだろう。これらは業者側の丸儲けとなる。

米国や中国では、グルーポンビジネスに参入した会社は100社に達しているという。日本でも現時点で、20~30社ほどサービスを始めているようだ。ビジネスモデルのポテンシャルを考えれば、こうした状況は理解できる。なにしろ資金がほとんどなくても始められ、そのうえ在庫を抱える必要がないからだ。堀江貴文氏がよく、利益率が高く在庫をできるだけ持たないですみ、月極めで低額の収入があり大資本の要らない商売がお勧めと書いているが、まさにグルーポンのことだ。

ところで米国の本家グルーポン創業者は、始めからここまで計算していたんだろうか。思いついて始めてみたらうまく行ってしまったというパターンなのだろうか。計算づくで始めたのならすごすぎるアイデアだ。どういう考え方の人なのかすごく興味がある。