株式市場の役に立たないランキング

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株式市場は役に立たないランキングにあふれている。全銘柄の値上がり率ランキングとかがそうだ。 慣れてくればそういうのは無視するようになるんだけど、初めのうちはそうもいかない。 Yahoo!ファイナンスInfoseekマネー、それからBiglobeマネーgooマネーniftyファイナンスもそうなんだけど、なぜか金融系のポータルサイトはトップページにこういう無駄なランキングを載せている。サイトの性格上、株式についてまだあまり知らない人がこういう見るだけ無駄なランキングを参考にしてしまうことだってあるだろう。実際ぼく自身、株式情報の世界に入ったころは、毎日値上がり率ランキングをながめたりしていた。本当に無駄なことをしたと思う。 役に立たないランキングがなぜ役に立たないかの理由は、結構株価の本質にかかわる部分だったりする。なので、整理するために見る価値のないランキングと、それがなぜ無駄であるかについて書いてみた。

値上がり率・値下がり率ランキング

株価1円の銘柄が1円値上がりすると値上がり率は100%になる。じゃあこの会社の価値が2倍になったのかといえばそんなわけはなく、倒産株価のついた銘柄の、単なる値動きのアヤだ。 株式値上がり率ランキング 上の画像はYahoo!ファイナンスに載っていたある日の値上がり率ランキングなんだけど、みごとに上位は株価1ケタのゴミ銘柄がそろっている。本当に意味のある値上がりをしている銘柄がこのランキングの上位に入ることはほとんどまったくないだろう。単純な値上がり率ランキングというのはそういうものだ。 これは値下がり率ランキングでも同じことで、やっぱりランキング上位は株価1ケタ銘柄が並んでいる。参考にするならせめて市場を限定しないとだめだ。 東証1部値上がり率ランキング 上は東証1部限定の値上がり率ランキング。結局ランキング1位は1ケタ株価のシルバー精工(6453・東1)になっているんだけど、それでも2位以下にはこの日ニュースのあった銘柄が入ってきているので、それなりの参考にはなる。 株価は基本的に、巨大な売上と利益を上げる大企業の株が大きな時価総額を持ち値動きは重く、売上も利益も小さな企業の株は時価総額も小さく値動きが軽いという特徴がある。時価総額1兆円で株価が1000円の銘柄が10%値上がりするためには1000億円以上の買いが必要だが、時価総額10億円で株価100円の銘柄が10%上昇するために必要な買いは1億円ですむ。 上のランキング画像のトップにあるNESTAGE(7633・JQ)という会社の時価総額は約3億円だ。NESTAGEの株価は毎日のように100%上昇したり50%値下がりしたりするが、そのことには意味がない。時価総額が10兆円を超えるトヨタ自動車(7203・東1)の株価が10%上昇することはめったにない。5%でもそうだろう。そしてトヨタ株が1日で、たとえ3%でも動くならそれは大きな意味を持つ。 つまり、同じ上昇率・下落率という尺度だけでランキングを算出することには意味がない、ランキングとして参考にするなら上場市場や時価総額、あるいは同一業種などに絞らないとだめということだ。

出来高ランキング

これもそのままでは意味のないランキングなんだけど、なぜかYahoo!ファイナンスとniftyファイナンスではトップページに掲載されている。値上がり率・値下がり率ランキングに意味がないのと同じで、1株の値段が違うんだから単純にランキングを出しても意味がない。 例えばJR東海(9022・東1)株の2010年3月30日終値は70万6000円で出来高は4526株だ。これに対し、JR東日本(9020・東1)の同じ日の終値は6350円で出来高は125万3500株。JR東海株の出来高が、JR東日本の出来高を上回ることは、株式分割が行われない限り永遠にない。たとえJR東海株の売買代金がJR東日本株をはるかに上回る日があったとしてもだ。 また、出来高ランキングは大型株が上位に来やすい特徴がある。この点は値上がり率・値下がり率ランキングとは逆だ。これも考えてみれば当然で、時価総額上位の銘柄ほど発行済株式数が多く、歴史の古い大企業ほど市場に流通する株数が多いのだから必然的に出来高も増えやすい。時価総額の小さい企業で発行済み株数が多いと、上で挙げたような株価1ケタ銘柄になってしまう。 ということで、出来高ランキングも知らずに見ていると問題があるということだ。ちなみにYahoo!ファイナンスには単元当り出来高ランキングというものがあって、こちらはもうちょっと役に立つかもしれない。 もっともこのランキングも、同じ価格帯で単元株に違いがある銘柄の差を吸収できないので、問題があることには変わりない。時価総額が同じくらいで株価も同程度の2つの銘柄で、一方の単元株が1000株で、もう一方は100株というケースは多い。単元当り出来高ランキングではこの2銘柄を同じ土俵で比べることができない。

値上がり幅・値下がり幅ランキング

ポータルサイトのランキングからは姿を消したけど、今でも残るところには残ってるのかな。これの意味のなさは上記2つのランキングの比ではなく、何を考えてこんなランキング用意してるんだろうと思った。 当たり前だけど、ランキング上位は株価が10万円以上の銘柄ばかりである。2004年から2006年の新興バブルの頃など株価が100万円以上ある銘柄がたくさんあって、1日の値動きが10万円を超すのは当たり前だった。繰り返しになるが、時価総額や発行済み株式数、それに単元株の異なる株式を同じ土俵で比べても意味がない。

売買代金ランキング

これは意味がなくもないか。ただ、このランキングだとやはり時価総額上位銘柄が上位を独占するので、例えば小型成長株などは急騰しても入ってこない。大型株にしか興味がないなら素直に見ていてもいいが、個人投資家が初めて株式投資に挑戦しようとするときには、あまり見ても意味がないランキング。 売買代金急増ランキングとかを見ると、株価が初動段階の銘柄を見つけられたりするので、参考にするならそちらの方がいいと思う。ポータルサイトで売買代金増加率を提供しているサイトは見当たらないが、証券会社によっては提供している。なければ出来高急増でも代用が可能で、こちらはYahoo!ファイナンスで提供していた。普段の売買があまりない流動性の低い銘柄は急増ランキングに入ってきても除くのがコツ。

PERランキング

これもYahoo!ファイナンスに用意されているランキングなんだけど、PERって一つの銘柄がある時期、他の時期に比べて高いか安いかを比較する時か、あるいは同一業種内の銘柄で高いか安いかを比較するなど、制限を設けて使わないと意味がないと思う。 PERは異常値になりやすい指標で、特に今の時期みたいな景気が底打ちから回復へ向かいつつある時期だと、純利益がかなり低くなるか、あるいは赤字の企業が続出するわけで、PERが判断基準として使えない銘柄がかなりの数になる。低PERなんかはフィルタリング次第でかなり役に立つけど、高PERランキングなんかは用意してある意味が分からない。

最後に

以上、ぐだぐだと書いてみたけど、要するに株式というものは、時価総額や発行済み株式数などの条件を無視しては意味のある比較にならないということで。これ、株式投資を理解している人には説明の必要もないんだけど、かといって初心者の人には分かりにくい。分かってしまえばなんでもないことなんだけど、分かるまでは「株価が持つ本当の意味」を理解できるようにならない。ポータルサイトでなぜかそういう意味のないランキングが掲載されていることが多かったので書いてみた。
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