キリン、サントリーとの統合交渉進展報道で続伸|でも各紙報道では暗雲も

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サントリーホールディングスとの統合交渉前進が報じられたキリンホールディングス(2503・東1)が続伸。一時48円高の1532円まで買われた。24日付日本経済新聞朝刊で、統合時期を2011年春をメドとすることで大筋合意と報じられ、好感された。

ただ、日経新聞以外の各紙の報道もあわせて読むと、交渉にはまだ山場が残っているもよう。

難航しているのは新会社の株式保有に絡んだ統合比率の交渉。サントリー株式は89.3%を、創業家の佐治家と鳥井家の資産管理会社「寿不動産」が保有している。キリンとサントリーの統合比率次第では新会社の株式の33.4%超を寿不動産が握ることになり、サントリーが主導権を握ることになりかねない。各紙報道によると、統合比率はキリン1に対し、サントリーを産経新聞は0.6日経新聞は0.7毎日新聞は0.8としている。読売新聞は1対1の統合を行った場合を記事にしているが、この件に関しあまり取材していないためだろう。

収益の規模でキリンに劣るサントリーにとって、重要事項の決定に関する拒否権を持つことができる株式33.4%超の保有は譲れない一線。統合比率1対0.6であれば33.4%に達するとはいえ、統合交渉の過程を伝える記事から浮かんでくるのは、両社が合併した後の企業統治に手こずりそうな情景だ。

簡単ではない統合

そもそも大阪発祥で、現在も大阪に本社を持ち、非上場会社として歩んできたサントリーと、三菱財閥の中心企業の1社として発足し、明治時代から上場企業として株式を公開してきたキリンは、ほとんど対極の企業文化と歴史を持つ。国内市場の縮小と、巨大化する海外食品企業に対抗する必要に迫られ合併を決めたものの、水と油の両社が統合を成功させるのは簡単なことではない。

産経新聞によると、寿不動産が新会社の33.4%超の株式を保有することに難色を示したのは三菱グループとしており、すでに創業家が絶対的な力を持つ同族会社と、グループ首脳の意向に左右される財閥系会社の違いが表面化している。

また、毎日新聞によると、「キリンがフィリピンのビール会社買収を決め、サントリーがフランス飲料大手オレンジーナ・シュウェップス買収を決めた際も、両社間での事前調整はなかった」としており、仮に統合を行ったところで、その後の融和に暗雲を感じさせる状況もある。ただしこの記事で指摘されている「キリンが買収したフィリピンのビール会社」はサンミゲルとみられるが、サンミゲルの本体買収はキリンとサントリーの統合交渉が報じられる以前であり、事実誤認が混じっている可能性もなくはない。もっとも、オレンジーナ買収は統合交渉が明らかになって以降。同じ記事中で、「統合が最終的に合意するまでは単独で成長戦略を描くのが筋」とのサントリー幹部の発言も伝えており、統合の難しさを伝える点での信憑性は高そうだ。

25日のキリン株は上昇となったが、統合交渉進展報道は、企業文化の全く違う2社がうまくやっていくことの難しさを、改めて浮き彫りにしたと言えよう。

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