新聞社連合の「グーグル外し」はありえるのだろうか?

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ルパート・マードックが故郷で吼えて、グーグルニュースサイトに記事を掲載しない措置を検討しているとインタビューに答えた。 テッククランチによると、マイクロソフト欧州の大手新聞社の代表を集めた会合を持った。さらにテッククランチでは、マイクロソフトの幹部が、グーグルによる記事のインデクシングを拒否し、金銭を支払うことを条件にビングへ独占的にインデクシングさせるべきだと述べたことを伝えている。 マードックの発言と、マイクロソフトの動きの間に関連があるかどうかは分からない。ただ、ある意図のもとに何かが動き出しつつあることは間違いない。すべてはグーグル外しだ。

マイクロソフトの意図するところ

グーグル外しがあったとして、それが成功することなんてことがありえるだろうか? グーグルのインデクシングを締めだしたところで読者を失うだけで、そんな行為は新聞社にとってなんの利益にもならないという意見は多い。 けれど、ここにマイクロソフトが絡んでくるとなると事情が変わってくる。 テッククランチでマイケル・アーリントンが指摘している可能性を、筋書きとして書き出すと、つまりはこういうことだ。
  1. マイクロソフトが有力メディアと独占的インデクシング契約を結ぶ。
  2. ある日、各国の有力サイトの記事が、一切グーグルでは検索できなくなる。
  3. 変わってビングだけがそれらの記事を検索できるサーチエンジンとなる。
  4. これまでグーグルを使っていたユーザーは一斉にビングへ移行する。
このストーリーでは、新聞社サイトはトラフィックの流入源を失わず、広告収入に加えてマイクロソフトから見返りを得る。

追い込まれている新聞社

このやり方は、大きな反発を買うだろう。新聞社が独占に手を貸すことになるし、昨日までの独占企業マイクロソフトの返り咲きを後押しするのが、さえたやり方とはとてもいえない。 とはいえ、背に腹を変えられない事情はある。こんなことをしても読者を失うだけだというのが、ユーザーサイドの意見だ。しかし、どれだけグーグル経由で読者を得ても、それが収益につながらない現実がある限り、グーグル外しに走る可能性はある。 新聞社は収益を縮小させ続け、記事制作のために多くの人員を必要とする組織は軋みをあげている。既に、多くの新聞社がリストラに追い込まれた。リストラはこれからも相次ぎ、新聞社は一層のコスト削減を迫られるだろう。新聞社が今ほしいものは金を落としてくれる読者であって、収益につながらない読者ではないのだ。単純に検索エンジン経由のトラフィックを失うデメリットを強調しても、目の前の金の方が重要だと考えることはありえるだろう。 まあそんなことを言ったところで、しょせんは穴だらけの計画で、実現性は乏しいように思う。仮に大手新聞社のサイトが一斉にグーグルの検索結果から消えたとしても、1社が抜け駆けしてグーグルへのインデクシングを許可すれば、そのサイトは多大な利益を得ることになるだろう。グーグル外しのために合意が必要な関係者の多さに比べ、抜け駆けのメリットが大きすぎる。

で、日本はどうなの?

日本での動きは、こうした英語圏の動きとは切り離されたものになるだろう。ただし、仮に日本でグーグル外しとでもいうべき動きがあったとして、それにどう対抗すればいいか、日本のヤフーがヒントを示している。 マードックの帝国は日本で地歩を築いておらず、グーグルは日本で検索エンジンシェア1位の座を得ることができずにいる。日本の検索エンジンは、長い間ヤフーがトップの地位にある。新聞社が赤字に陥っている点は英語圏のメディアと変わらないが、すでにヤフーは新興メディアに資金援助を行い、仮にヤフー外しが行われたところで、対抗する備えを用意してあるように見える。 ヤフーは大手全国紙すべてから記事提供を受け、通信社の記事も掲載し、さらには世間的には無名の新興メディアからも多くの記事を受け取っている。ヤフーから大きな恩恵を受けているのは一般には知られていない、しかしインターネット上ではビッグネームとなりつつあるそれら新興メディアだ。ヤフーが強力な集客力で多大な利益を上げ、一方で新聞社は利益を上げられないという状況に業を煮やし、一斉に有力メディアがヤフーへの掲載や検索結果への反映を断っても、その穴は新興メディアが埋めてしまうだろう。

再びグーグル外しの成否を考える

同じことは、英語圏でグーグル外しが行われた際にも言えて、仮にグーグルの検索結果から見慣れた有力メディアの記事が消えても、その穴は他の誰かに容易に埋められてしまうだろう。そのとき起こるのは、新旧メディア企業の、完全な世代交代だと思う。
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