静岡県が基準値超えセシウム検出を隠蔽しようとしたととれる記事に関しての雑感

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6月10日付の朝日新聞に、らでぃっしゅぼーやが行った自主検査で静岡県産物から基準値を上回る放射性物質が検出され、同社がそれをホームページで公表しようとしたところ静岡県から公表を控えるよう要請があったとの記事が掲載されていた。

放射性物質検出、静岡県が公表を制止 食品通販業者に

2011年6月10日4時15分

静岡県が、自主検査で国の基準を超える放射性物質が検出されたとホームページ(HP)で公表しようとした東京都内の食品通販業者に、公表を控えるよう求めていたことが分かった。

有機野菜などの会員制宅配サービスを行う「らでぃっしゅぼーや」(東京都港区)。同社は自主検査で基準を超えたと6日に県に報告。この際、HPでの公表を県が控えるよう求めたという。同社は商品を購入した会員に、経緯と商品回収の意向を伝える手紙を郵送したという。

県経済産業部は「消費者への連絡など最低限のことはやっている。HPで出すとかえって不安を広げかねない」と説明している。

かなり変な記事で、静岡の何から放射性物質が検出されたのかまったく分からない。一読すると静岡県が隠蔽を図ったかのような内容で、思わず頭に血が上るが、よくよく調べてみるとそう単純なものでもなさそうだ。これに関してはこちらのブログがよくまとまっている。かいつまんで言うと、静岡県はらでぃっしゅぼーやから検査結果を知らされたときに、自分たちでも検査をするので、公表はその結果が出てからにしてほしいと要請したということのようだ。 朝日新聞の記事についたはてなブックマークの反応を見ていると、途中から反応が変わっている。初めのうちは静岡県が隠蔽を図ろうとしたと受け取り、それを非難するコメントが並んでいる。が、途中から、これはダブルチェック中で隠蔽ではない、朝日新聞の記事が悪いのだという論調に変わっている。 私自身の感想としては、これはやはり静岡県の対応が間違いだと思う。朝日新聞の記事は確かに言葉足らずで、ほめられた内容ではない。しかし、朝日新聞の記事が悪いから静岡県の対応は間違いではなかったとはならない。基本的にウェブの論調は反マスメディアに流れやすく、ここでも同じことが起きているように思う。 正しい対応があったとすれば、以下のようなものだったと思う。
  1. 静岡県の自主検査で基準値を上回る茶葉を発見
  2. 出荷規制を実施する
しかし実際には、静岡県の検査をすり抜けて基準値を超える茶が出荷されてしまった。その事実も私は別に責めようとは思わない。幸いにも、日本には消費者により安全な食物を届けようと真面目に仕事をしている民間企業が存在する。らでぃっしゅぼーやは自主検査で基準値を超えるお茶を発見した。そしてそのことを静岡県に通報した。その後に取るべき最も正しい対応はこういうものだったのではないか。
  1. らでぃっしゅぼーやから基準値を上回る茶葉があったとの報告を静岡県が受け取る
  2. 静岡県は速やかにその事実を公表し、現在精密な検査を実施中なので、結果を発表するまで手元にある静岡茶を口にするのは控えて欲しいと伝える。
その上で、らでぃっしゅぼーやの検査に間違いがあったのなら、そのことを公表した上で、基準値を下回っているので飲んでも大丈夫だと発表する。基準値を上回っていたことに間違いがなかったのなら、口にするのを控えてもらっていた茶葉を廃棄するなり返品するなりしてもらう。これが一番正しい対応ではないかと思う。 事実としては、6月6日にらでぃっしゅぼーやが基準値を超える茶を発見し、発表が行われたのは9日になってからだ。その3日間、公表を控えたことで、基準値を超えるセシウムが検出された茶を口にした人がいるかもしれないのだ。静岡県がらでぃっしゅぼーやに公表を控えてほしいと要請していなければ、らでぃっしゅぼーやの利用者以外も、6月6日の時点でこの事実を知ることができていた。朝日新聞の記事の出来が悪いのは確かだが、この記事自体は必要なものだったと思う。これがなければ、私はこの空白の3日間の事実を知り得なかった。 そもそも3月11日以後の放射性物質の飛散と発表に関して、パニックと風評被害を避けるということを大義名分に、精緻な検査によって事実が確定するまで発表を控える傾向があった。また、より危険性を強調した意見には、いい加減なことをいうなとの批判が浴びせられることも多かった。実際には、福島第一原発が相次いで爆発した時期に多くの放射性物質が飛散していたのであり、あれほど起きていないと言っていたメルトダウンも起きていた。後から発表するのではなく、その時即座に公開しなかったことで国や東京電力は信用を失っているのではなかったのか。 今回の件においても、6月6日の時点で基準値を上回るセシウムが製茶から検出されたという事実は厳然と存在した。そして、静岡県がそのことをすぐに発表しなかったことには変わりがない。考えるべきは6月6日から9日のあいだ、情報の空白があったということではないだろうか。朝日新聞の記事を批判するあまり、3日間にわたって不作為による内部被曝があったとの視点を忘れてはならないと思う。
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