ガラパゴスマヨネーズの可能性

公開
スポンサーリンク
J-CASTにあったキユーピーマヨネーズが米国のアマゾンで人気という記事を見て、キユーピーの業績について調べるうちに、既視感を覚えた。 高い評価を得ているにもかかわらず、海外展開に積極的でなかったり、売り方が下手だったりするために縮小する日本国内の市場でしか利益を上げられないという、現在の日本が多くの分野で陥っている図式に似ていると思った。

食品業界のグローバル企業

食品業界には、売上と利益の多くを海外市場で稼ぐ日本企業が何社か存在する。例えばキッコーマンは、2009年3月期の海外売上高比率が30.3%、営業利益は60.8%と過半数を超えている。マルちゃんの東洋水産は海外売上高比率18.5%、営業利益27.4%と、やはり海外市場の占める割合は大きい。キッコーマンにしろ東洋水産にしろ、利益率は海外市場の方が高く、業績に与える影響も大きい。 対してキユーピーは、2009年11月期時点の海外売上高比率は全売上高の10%に達しておらず、数値を開示すらしていない。キッコーマンや東洋水産に比べると、海外進出が進んでいるとは言えない。

自らの価値への鈍感さ

J-CASTに対するキユーピーのコメントは以下のようなものだった。
米アマゾンで人気だというのは最近知りました。日本で食べて気に入った方が、向こうで買っているのでしょうか
米国市場における自社主力商品のマーケット状況や売れ行きについて、注意を払っていたようには見えない。自社商品の持つ価値と可能性に気づいていないように思う。この高い評価を、売上の増加に結び付けられたらと考えずにはいられない。

キユーピーにみるグローバル展開の可能性

キユーピーで興味深いのは、キッコーマンの主力商品が醤油、東洋水産はカップ麺と、ともに日本発の商品で地歩を築いているのに対し、フランス発祥の調味料であるマヨネーズで好評を得ていることだ。内側を向いてこつこつと努力を重ねるうちに、他国の人間を驚かせるほどの品質に達する。それは、日本の成功パターンの一つだ。 近年では、日本企業にしばしば見られる過度に高い品質と内向きの設計がガラパゴスと揶揄され問題視されるものの、それでも高品質は簡単に捨て去ってはいけない美点であることに変わりはない。 キユーピーマヨネーズも海外のそれとは異なった、ガラパゴス的なマヨネーズだったのだと思う。しかし、このケースにおいてはそんなマヨネーズが高い評価を得ている。キユーピーが独自のマヨネーズで海外売上高を伸ばし、キッコーマンや東洋水産がそうであるように、海外市場から大きな利益を得るようになれば、ガラパゴスはガラパゴスでなくなり、国際競争力を持った商品に生まれ変わる。

現状の方向

キユーピーは2012年11月期までに、売上高を600億円、営業利益を70億円増加させる計画(PDF)を打ち出している。 キユーピー 2012年11月期 事業別 売上高・利益目標 マヨネーズは調味料・加工食品事業に属する。「売上高・利益ともに、調味料・加工食品事業以外の構成比拡大をめざす」とあり、マヨネーズ以外に力を割く姿勢だ。 キユーピー 2012年11月期への新たな展開 新たな展開として掲げるのは東アジアでの拡大で、米国での事業展開は視野に入っていない。成長著しい東アジア市場への注力という方針には文句のつけようがない。しかし、なんとも言えないもったいなさを感じる。巨大な米国市場に足がかりを築くチャンスが転がりこんできているなか、それを生かさない企業があっていいのかとすら思う。 それに、日本由来の食品でないマヨネーズで米国市場を開拓できたなら、キッコーマンや東洋水産の成功とは違った夢があると思う。 今のところキユーピーは、米国市場に目を向けてはいないようだ。米国のアマゾンで人気という記事は結構な話題になったようだ。キユーピー社員の目に触れ、何らかのアクションがあるかしばらく注視していようと思う。
スポンサーリンク
スポンサーリンク