エイチエス証券がIPO株を社員で山分け

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これはひどい。ひところほどの威力はなくなった新規上場株ですが、それでも公開前に配分を受けることができれば非常に高い確率で値上がり益を見込めるわけで、魅力がなくなってしまったわけではありません。新規公開株が登場する度に申し込み、抽選を心待ちにしているIPO投資家も多いと思います。 6月15日に日本証券業協会が発表したところによると、エイチ・エス証券では、本来抽選で割り当てられるIPO株を、なんと社員7名が自ら受け取っていたようです。発表資料(PDF)によると、

営業統括本部長、監査部長及び営業部店長等の行為者7名においては、名義借り等により自己の利益を得ることを目的とし、少なくとも平成16年3月から平成17年11月までの間、不公正な配分を行っていた。

とのことです。要するに名義借りした口座でブックビルディングを申し込み、その口座を当たりにしたわけですね。プレゼントキャンペーンで社員が自分を当選者にするみたいな話で、はっきり言ってめちゃくちゃです。 しかも平成16年3月から平成17年11月といえば、2004年から2005年にかけてのIPOバブル期。新規公開株が上場のたびに公開価格を遥かに上回る初値をつけていた頃です。証券業界全体でIPO人気を煽りに煽っていた頃でもあり、そういう時期に証券会社自ら社員にIPOを割り当てていたのですから、投資家を馬鹿にするにもほどがある。 日証協の発表は6月15日で、ロイターや日本経済新聞がこのニュースを15日午後5時から午後6時にかけて報道しているのですが、16日午前7時現在、HS証券のサイトでは特に何の発表もありません。親会社の澤田ホールディングスの方も16日午前7時現在、サイトでも適時開示情報でも発表なし。内容からいって何らかの発表は必要と思われるのですが、これからプレスリリースが出るかな。 報道各社の記事も「不構成な配分」の一文でさらっと触れるだけで、抽選する側が自分たちを当選者にしていたという一番ひどい部分を書いていません。ロイターの記事では以下のような書き方です。

日本証券業協会は15日、エイチ・エス証券に8000万円の過怠金を科す処分を行ったと発表した。新規公開株式の不公正な配分が行われていたことに伴う措置。

日証協は過怠金のほか、再発防止策等の策定、提出も求めている。

日経の方も同様で、「株式を顧客に不公平に配分していたほか、監査部長らが長期間にわたって顧客資産を横領していた」という書き方なので、自分で自分にIPOを割り当てていたことは分かりません。16日以降にきちんと取材した記事が出てくるのかな。 どの銘柄でこういうことをやったのかは不明ですが、主幹事となった銘柄であれば割り当ても多く、不正が行われた銘柄が含まれる可能性も高いかもしれないと、試みにHS証券が主幹事を勤めた銘柄をリストアップしてみた。
上場日銘柄名銘柄コード市場公募価格初値上昇率
2002/9/10ビービーネット2318ヘラクレス14500018700029%
2003/1/28オックス情報2350ヘラクレス19000026000037%
2003/4/16ジョルダン3710ヘラクレス44080082%
2003/6/30アソシエント・テクノロジー3714マザーズ19500030000054%
2003/11/25サイバーファーム2377ヘラクレス33000042100028%
2004/3/3アップガレージ3311マザーズ27500052700092%
2004/3/16アルファ・トレンド4352アンビシャス65000150000131%
2004/5/17東京グロースリート投資法人8963大証リート395000
2004/5/20コムシード3739セントレックス5000002200000340%
2004/5/26レカム3323ヘラクレス250000950000280%
2004/6/1エイペックス3324セントレックス52000091500076%
2004/7/2リンク・ワン2403マザーズ4000002810000603%
2004/8/18シコー技研6667マザーズ3000000500000067%
2004/8/23イーネット・ジャパン3334ヘラクレス4300001000000133%
2004/10/1キャリアデザインセンター2410ヘラクレス7000007000000%
2004/10/5ベリトランス3749ヘラクレス6000001350000125%
2004/10/2821LADY3346セントレックス11000094000-15%
2004/12/9パラカ4809マザーズ55000091400066%
2004/12/17ワールド・ロジ9378ヘラクレス19500023000018%
2005/3/3ロジコム8938ヘラクレス140000421000201%
2005/4/5シンワアートオークション2437ヘラクレス6500003010000363%
2005/9/21アイフィスジャパン7833マザーズ6900001850000168%
2005/9/29ランドコム8948セントレックス300005150072%
2005/11/17データプレイス3781セントレックス17000025100048%
2005/11/29アプレシオ2460セントレックス3500003820009%
2006/4/6ゴルフ・ドゥ3032セントレックス170000407000139%
2006/6/20オウケイウェイヴ3808セントレックス15500019000023%
2006/8/22メディカル・ケア・サービス2494セントレックス2750003010009%
2006/9/12三栄建築設計3228セントレックス3100003250005%
2007/2/6光ハイツ・ヴェラス2137アンビシャス2700002820004%
不正が行われた2004年2月から2005年11月と、HS証券が主幹事銘柄を多数上場させていた時期が、ちょうど重なっていることが分かります。不正な配分を行った銘柄もこのリストに含まれている可能性が高いだろうと思うわけです。初値上昇率は倍増以上がごろごろとあり、仮にこのリスト中の銘柄で不正を行っていたのなら、かなりの利益を得ていたでしょう。 しかしこれ、別の意味で凶悪な表ですね。BBネットにオックス情報にアソシエント・テクノロジーにサイバーファームにと、別の意味で引いてしまいます。あ、サイバーファームとHS証券ってライブドアの沖縄のあれか…。 うん、そんな証券会社なら社員が当選者になるくらい驚きではないですね。調べていたらそういう結論に達してしまった。
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