Googleの登場しなかった世界の検索

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例えばMicrosoft Office。Office2003までのファイル拡張子はEXCELであればxlsだったが、Office2007からは拡張子がxlsxもしくはxlsmに変わった。2003以前のEXCELではxlsxやxlsmを開くことはできない。Office2000を使っていた人が、Office2003を買う必要はほとんどなく、Office2000を使い続けても問題はなかった。ファイル拡張子が同じで、バージョン間の互換性に苦しむことがなかったからだ。 しかしOffice2007が普及を始めてからはそうもいかない。xlsx拡張子のファイルを開くことはOffice2007以降でなければ無理で、例えば取引相手の多くが無頓着に2007形式で保存したファイルを送ってくるようになると、自分たちもソフトのバージョンアップを迫られることになる。 メーカーは利便性を向上させた、新機能を付けた、セキュリティをアップさせたと言ってはバージョンアップを行い、ユーザーに購入を迫った。これがソフトウェアをPCにインストールする時代のビジネスモデルだった。 今では多くのソフトウェアがウェブアプリケーションとして提供されるようになった。この方法においては数年に一度の大規模なバージョンアップは必要なく、日々の細かいアップデートが可能となる。例えば検索エンジンは無料で使えるウェブアプリケーションだが、Googleは年間数百回アルゴリズムに変更を加えているという。 あまりにも生活に溶け込んでいるので意識しないが、検索エンジンはブラウザで提供されるウェブアプリケーションだ。「検索エンジンを使って何かを調べる」という行為は完全にぼくたちの日常に溶け込んで、のどが乾いたときに水を飲むくらいの感覚となっている。ぼくらが水を飲むたびに、Googleのポケットには小銭が転がり込む。 Googleには、あるいはYahoo!にも、検索エンジンをインストール型のソフトウェアとして提供するという選択肢だってあった。過去のビジネスモデルを無批判に模倣していれば、ブラウザ上で無料のソフトウェアを提供するのではなく、数年に一度新しいバージョンの検索エンジンをお金を出して手に入れる世界だってありえたのだ。Googleというライバルがいなければ、少なくともMicrosoftはそうしていただろう。Googleの登場しなかった世界では、ウェブ上を検索するためにBing2003を立ち上げ、ある日新しい情報を検索するためにはBing2007を購入しなければならなくなっただろう。その世界では検索エンジンでものを調べるという行為が、今より遥かにストレスにあふれたものとなっていただろう。
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